決算説明資料は、数字を掲載し、見た目を整えれば完成するものではありません。同じ業績やKPIでも、どの情報を先に見せるか、何と比較するか、どの数字を強調するかによって、資料の伝わり方は大きく変わります。
一方で、すべてのページを毎回作り直す必要もありません。
現在の資料の良い部分を活かしながら、改善すべき箇所に優先順位をつけ、その決算で必要な改善を積み重ねることが大切です。
この記事では、決算説明資料を改善するときに確認したいポイントを、構成・数字・グラフ・デザインの順に整理します。
決算説明資料を改善するとき、最初からデザインを考える必要はありません。
まず確認したいのは、「今回の決算で、投資家に何を理解してほしいのか」です。
売上が伸びた。
利益率が改善した。
新規顧客が増えた。
価格改定が進んだ。
新しい成長投資を始めた。
決算には多くの情報がありますが、すべてを同じ強さで見せると、かえって重要な変化が伝わりにくくなります。
各ページについて、
を整理すると、資料全体の読みやすさが大きく変わります。
例えば、
タイトル:クラウド事業 KPIの推移
だけでは、「何のページか」は分かりますが、「今回何が重要なのか」までは分かりません。
そこで、
契約企業数とARRが増加。チャーンレートは低水準を維持
のような結論を加えると、グラフを見る前にページの意味を理解できます。
情報が多いこと自体が問題なのではありません。
問題になるのは、どこから読めばいいのか分からないことです。
例えば1ページの中に、
がすべて同じ強さで配置されていると、読み手は自分で重要度を判断しなければなりません。
改善するときは、
結論 → 重要数字 → 推移 → 詳細
というように、情報の役割を整理します。
ページ数を増やすことが正解とも限りません。
一覧性を優先した方が良いページもあれば、一つの重要KPIに十分な表示領域を与えた方が理解しやすいページもあります。
決算資料では、多くの数値を掲載する必要があります。
しかし、すべての数字を同じ大きさで表示すると、かえって重要な数字が埋もれてしまいます。
基本的には、
現在どの水準なのか。
前年同期や前四半期と比べてどう変わったのか。
中長期的にどの方向へ動いているのか。
の順で考えると整理しやすくなります。
例えばHubSpotのInvestor Presentationでは、顧客数について長期推移を見せながら、起点と現在値、CAGRを大きく表示しています。
細かな数字をすべて並べるのではなく、「どれだけ成長したのか」を短時間で理解できる構成です。
数字を減らすことが目的ではありません。
数字の役割を分けることが重要です。
グラフを見栄えだけで選ぶと、伝えたい内容と表現がずれてしまいます。
例えば、
| 伝えたいこと | 適したグラフ |
|---|---|
| 推移を伝えたい | 折れ線グラフ |
| 年度ごとの大きさを比較したい | 棒グラフ |
| 構成比を見せたい | 積み上げ棒グラフなど |
というように、まず比較目的を決めます。
さらに決算説明資料では、
を明確に区別することも重要です。
色や線種を資料全体で統一すると、ページが変わっても読み方を迷いにくくなります。
KPIの見せ方には、一つの正解があるわけではありません。
例えばSansanの決算説明資料では、複数の数字や中期財務方針を一つのページで整理し、一覧性を持たせた表現が使われています。
一方、米国企業のInvestor Presentationでは、一つのKPIに一ページを使い、数字を大きく見せる構成も多く見られます。
Snowflakeも、主要KPIを指標ごとに分けて提示する構成が参考になります。
どちらが優れているという話ではありません。
そのページで何を理解してほしいかによって使い分けることが大切です。
例えば、
という方法も考えられます。
決算説明資料のデザインで重要なのは、装飾を増やすことではありません。
むしろ、
のルールを揃えることが重要です。
例えば同じ資料内で、
あるページでは当期が青、
別のページでは当期がオレンジ、
また別のページでは実績と予想が同じ色、
となっていると、ページごとに読み方を覚え直さなければなりません。
資料全体で同じ意味に同じ表現を使うことで、理解に必要な負担を減らせます。
決算説明資料を改善するとき、「一度すべてリニューアルしなければならない」と考える必要はありません。
むしろ、現在の資料を確認すると、
が混在していることがほとんどです。
そこで、
| KEEP | 現在の良さを維持 |
|---|---|
| IMPROVE | 現在の構成を活かして改善 |
| REDESIGN | ページ構造から再設計 |
のように分類すると、改善の優先順位を決めやすくなります。
重要なのは、全ページを同時に直すことではなく、改善効果の高いページから着手することです。
資料改善で難しいのは、「なぜ、この表現に変えるのか」という根拠です。
デザイナーや制作会社の好みだけで変更してしまうと、担当者側も社内で説明しづらくなります。
そこで役立つのが、国内外のIR事例との比較です。
例えば、
などを比較します。
海外事例をそのまま真似する必要はありません。
自社に合う考え方だけを取り入れることがポイントです。
決算説明資料は、一度完成したら終わりではありません。
次の四半期には数字が増え、事業環境が変わり、説明すべきテーマも変わります。
そこで重要になるのが、一度改善した内容を、次の決算でも使えるルールとして残すことです。
例えば、
をルール化します。
すると次回は、同じ問題をもう一度考える必要がありません。
基本品質が安定するほど、「今回の決算で何を伝えるか」という、より重要な検討に時間を使えるようになります。
決算説明資料には、デザインだけでは解決できない課題があります。
構成、メッセージ、KPI、数字の比較方法、グラフ、デザイン。
それぞれを個別に見るのではなく、資料全体の中で優先順位をつけることが大切です。
HIGHVOLUME「IRデザイン室」では、現在の決算説明資料を確認し、良い部分を活かしながら、
どこに課題があるのか
なぜ改善する必要があるのか
何から取り組むべきか
を整理する「IR資料 改善診断」を行っています。
いきなり全面リニューアルする必要はありません。
現在の資料を起点に、必要な改善から始めることができます。
御社専任の「IRデザイン室」として、IR資料全般を継続支援します。